環境問題と経済問題の解決に挑戦 油温減圧式乾燥機 COOKER

RESOUXIA#01

油温減圧式乾燥機COOKER(クッカー)
通称てんぷら方式と呼ばれる方法で有機廃棄物を飼料に換えて社会に還元していく「循環型の畜産業」を実現する乾燥機。日本のみならず世界各国の環境問題の解決と共に、新たな経済効果を生み出すエコステージエンジニアリングとサンテックが誇る製品。

モロッコにおけるオリーブ産業

北アフリカに位置し、西は大西洋、北は地中海に面しているモロッコ。ジブラルタル海峡を渡ればスペインというロケーションもあり、ヨーロッパとアラビアンな雰囲気の漂うエキゾチックな国。ベルベル文化、アラブ文化、ヨーロッパ文化が融合していることで有名である。そんなモロッコの経済を支えている産業は農業であり、その中でもオリーブの生産量は世界でもトップクラス。面積は日本の1.2倍と大差はないが、オリーブの生産量の差はなんと2600倍!この数字で、モロッコがどれだけオリーブの生産が盛んな農業大国であるかが分かる。モロッコは、現行の農業政策である「緑のモロッコ計画(Plan Maroc Vert)」においてオリーブ栽培の拡大とオリーブオイルの増産を目指しており、その生産量は近年順調に増加している。しかし、生産量が増加する一方でオリーブオイルを搾取した際に生じる農業廃棄物による深刻な環境問題に直面している。

オリーブの搾油粕による環境問題

オリーブオイルは収穫されたオリーブの実から搾油することにより作られる。その際に生じる廃棄物の中にオリーブの搾りかす「搾油粕」というものがある。搾油粕は、水分率が高くペースト状のために保管・運搬が難しく、有効利用方法も確立されていない。搾油工場の多くが敷地内の保管槽に搾油粕を放置し、再利用ができない農業廃棄物として長期保管している状況にあるのだ。また、湿潤タイプの搾油粕は放置すると搾油果汁廃液が分離し、多量の浸出水が発生するため、土壌汚染が進み、やがて地下水に環境負荷を与える危険が増大している。モロッコ政府による「緑のモロッコ計画」を実現させる為にはこの問題の解決が必要不可欠な状況になってきている。

しかし、現状は政府が用意する処理施設だけでは追いついていない状況にある。そんな遠く離れたアフリカの地で起きている環境問題にサンテックが関わるようになったのは今から数年前の事である。

油温減圧式乾燥機COOKER

そんなモロッコのオリーブの搾りかす問題を解決するひとつの手段がエコステージエンジニアリングとサンテックの共同開発によって作られる、クッカーである。クッカーの最大の特徴は油温減圧乾燥という手法、通称「天ぷら方式」である。

高温の油で食品廃棄物を熱する事により、均一かつ早い処理能力で乾燥させる事ができる。その数値モロッコのオリーブの実験の場合、水分量がもともと40~50%で、一回あたり100キロ処理量で40分程度。さらに原料に含まれる栄養素、特にタンパク質を60%も残したままで飼料にする事ができる。 乾燥させる過程で、水分・油分を大幅にカットし、飼料の輸送コストまで削減出来る優れものなのである。 実際に100キロの原料をクッカーによって乾燥させる事で40キロにまで質量を減らす事にも成功している。 また、オリーブオイルには種類があり、一番搾りのオリーブオイルを「バージンオイル」と呼ぶのに対し、絞りかすに溶剤をかけて油脂分を抽出したものを「二番絞り油」と呼ぶ。二番搾り油はとても販売出来るような代物では無いのだが、クッカーはこれを原料として使う事により資源の再利用まで出来るのである。まさに、オリーブ産業においては理想の乾燥機なのだ。

未来へ

2017年からモロッコでの導入に向けて動き始めたクッカー。きっかけは国連ハビタット福岡本部からモロッコでのオリーブ産業に関する情報を聞いた事であった。我々エコステージエンジニアリング・サンテックが持つクッカーであれば、この問題解決に大きく貢献できるという思いからモロッコでの導入実現の為に試行錯誤を繰り返した。そして2019年に現地で行ったテストでは想定したよりも高い効果を達成する事ができた。この時は大型プラント設備に使用されるクッカーではなく、小型のクッカーと共に脱水機なども搭載コンテナサイズのミニプラントで行った。テストの為に作った小規模プラントだったが、現地の人にも非常に喜ばれ、新たな可能性があることを我々は感じた。

現在クッカーは日本で製造されている設備であるが、将来的には現地工場での製造を目指している。それはサンテックがモロッコに自社工場を持つという短期的なプランではない。サンテックラーニングセンターには今、アフリカからの実習生が研修を受けている。彼らが母国で製造できるチカラを身につけるための技術、資金のサポート、なによりサンテックのマインドを伝えることがラーニングセンターのコンセプトなのだ。農業国から工業国への脱皮を図っているモロッコにも大きく貢献することとなる。環境問題解決の為に作られるクッカーは、環境問題だけではなく経済発展にも繋がる夢の様な製品なのである。